SF
二〇一〇年代はSFがさらに拡散した時代だった。
「おやおや、今度は超人種族が自分の精神をコントロールできると信じている? 良くないですね、フォーリーさん、たいへん良くない」
「男たちよ! けだものたちよ! 立ち上がれ!」ロードストラムは吠えた。「旅の終わりにたどりつくのは死ぬってことだ。俺たちはまだ行くぞ!」
肝心な問題があと一つ——ジュディなのか、ダーリーンなのか。
私は自分がこの話からどんな物語を作ることになるか知っている。一つの言葉から次の言葉へと、徐々に自由になる物語だ。無意味な細部と真空から自らを作り上げていくタイプの物語。偶然みたいな選択が存在しない物語。
緑の草。黄色い太陽。蒼穹。白い雲。 完璧な夏の日。
「ドリフトグラスを探しているんだ」
単観、複観、多観。
いいか、ぼうず、人間は成長するか、それとも死ぬかだ。そのどっちかを選ばなくちゃいけない。そいつは一生続くんだ。
「——手持ちのあらゆる情報が状況の全体像と関わりあっているかどうかを常に確かめるんだ。おれを出し抜くにもそれしかない」
全ての可能な文字列。全ての本はその中に含まれる。
ここに本来書かれているものは、今見えている文章では全くない。
「昔、文字は生きていたんだと思わないかい」
だけど、また本を最初から読みはじめれば、みんな帰ってくるんだよ。
わたしはこの街、香料樹園にある公共図書館の、四段構造になった書架のうち、上から三段めの棚に住んでいる。
昔の暦で六千六百万年。それだけの期間を旅してきた。
「だったらなぜこういうものを買えるんですか?イヤバグや、ベーコンも。ちゃんとどこかで生産されてるからでしょう」
かつてそれは神の水と呼ばれた。中西部の平原に徐々に広がり、ロッキー山脈を越えて乾燥した土地に進出したアメリカの入植者たちは、そう呼んだ。
さて、もしそれよりももっと大切なことがあるとするなら、今こそそれが姿を現す時だ。
どこまでも荒涼と続く、がらんとした暗い回廊をながめ、そして、いままさに彼の手から離れようとしているはかない輝く断片を見た……。
もちろんそれが、この世でいちばん不思議なひと触れだった。
ひとつの都市、もうひとつの都市、また別の都市。——
文学はこれまで、架空の登場人物について語ってきた。我々はその先に進もう。つまり、架空の書物のことを書くのである。
本書は、株式会社ゲンロンが主催する「ゲンロン 大森望 SF創作講座」の講義録です。
ロボット三原則 第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
ロボット三原則 第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、このかぎりではない。
ロボット三原則 第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
目をつむっていたが、兵士たちの顔に浮かんでいた無慈悲な表情や、母親の顔があったところの血まみれの軟塊、赤ん坊の潰れた小さな体、その体から踏み潰された命をまだ見ることができた。
TAPはもっとも強制的なVR以上に、ユーザーを没入させることができる。いっさいの媒介なしに、人をある情動状態にすることができるのだ。
「ボードレールはそうやって発狂しました。でも私がここへ来た目的は、物理学です」