あかいねじ

感想を書く。SF、ミステリ、それ以外について。

アイザック・アシモフ『われはロボット』感想

ロボット三原則 第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

読んでない。が、短編は全部読んだので感想を書く。

ロビイ

  • ロボットのペットの話。
  • ロボットのペット;ロビイはグローリアのお気に入りのロボット。しかし母親がロボットばかりにかまっている娘をよく思わず、父親の反対を押し切ってロビイを返品してしまう。ロビイを失ったグローリアは塞ぎ込むようになり、いくら環境を変えても改善しない。父親がロボット工場見学を提案し、グローリアはそこでロビイを見つける。走り出したグローリアだったが、そこに人間が運転するトラクターが突進してくる。素早く動けない人間に対し、ロビイは素早く動いてグローリアを助ける。
  • 「親友」に似ている。それを長くしたような話。
  • アシモフ最初のロボット小説らしい。ロボット三原則にも言及されている(もっとも第一条にしか触れていない)。

堂々めぐり

  • ロボットが戻ってこない話。
  • ロボット三原則をポテンシャルの問題にして、円運動をするようになってしまったロボットを描いている。
  • 均衡するようなポテンシャルを作っちゃ、ダメだろ。適当にものをつくるな!

われ思う、ゆえに……

  • エネルギー中継器の運営をロボットに任せる話。かなり面白い。
  • 原題は"reason"で理性・推論する(こと)を意味する。
  • ロボットのキューティvs人間のパウエル・アンド・ドノヴァンの対立。キューティはエネルギー中継器を主と崇めてコントロール室から人間を締め出すが……。
  • 表面的には宗教にはまったロボットvs理性的な人間だが、実際には逆転しているという構図が面白い。
    • キューティは感覚より理性と論理的演繹を信じる。実際、彼の発言はほとんど正しく、根拠がある。人間は中継器の運営者としては間に合わせのものだし、少なくともステーションの全てはエネルギー中継器を目的として作られている。一方でパウエルやドノヴァンの発言の根拠は本に書いてある、私は知っている、というものでここに科学と宗教の方法論の逆転がある。

野うさぎを追って

  • 意図した通りに動かないロボットの話(第三弾)。
  • 6つでは多すぎたのなら設計が悪いだろ。適当にものをつくるな!

うそつき

  • テレパシーを持ったロボットの話。
  • 第一条からその人物にとって一番都合の良い受け答えをする。
  • ただ、それがバレると考えなかったのだろうか?長続きしない心地よい嘘は都合の悪い真実よりも悪い。この短編のラストのようにかえって危害が増すような結果に繋がる。それは第一条から許されないのでは。

迷子のロボット

  • 第一条が不完全なロボットの話。
  • 第一条が不完全なロボットが同型機の中に紛れ込んで区別がつかなくなってしまう。キャルヴィンは人間を危険に晒して第一条を使い、ロボットを炙り出そうとするがうまくいかず、却ってロボットを増長させてしまう。最後はロボットの優越感を逆手にとってロボットを見つけ出す。
  • アシモフの描くロボットはかなり人間らしい。具体的には、感情を持つように見える。
  • ロボットが優れていると言うとき、何が優れているのかは難しい。というのも、ロボット自身はふつう目的を持たないからだ。目的を持つのは人間であり、道具としてロボットを用いるが、その目的が達成されるかどうかはロボット本人(本ロボット)には関係がない。優劣というのは目的論を使う人間の思考方法にかなり限定されている尺度だと思う。

逃避

  • 人間の死と第一条のジレンマの話。
  • 宇宙船の作成を依頼されるロボット。しかしその宇宙船は必然的に一時的な死を含む。他社のロボットはそのジレンマから壊れてしまったがUSロボット社のロボットは何故かジレンマに陥らず宇宙船を完成させてしまった。キャルヴィンの助言から、生き返るなら問題ないと看做していた。
  • 第一条の落とし穴かもしれないが、生き返ることで死は問題ないにせよ苦痛を与えていることは変わらないのであまり納得できなかった。
  • パウエルとドノヴァンがとばっちりにあう。かわいそう。

証拠

  • 市長候補はロボットなのか?
  • 飲食を全くしない市長候補。その対立者がUSロボット社に調査を依頼する。その噂が市長候補の名前と共に広まったあと、市長候補の演説で一人の男が自分を殴ってみろという。第一条からロボットは人に危害を加えられないはずだが、市長は殴り、自分がロボットでないと民衆に知らしめる。
  • 実際殴られたのはロボットだった、というオチ。キャルヴィンはそれを黙っておく。
  • そんな簡単に払拭できる?
  • この後の話、災厄のときでもこの市長候補は登場している。出世してるし。

災厄のとき

  • 世界を管理するロボットの話。
  • マシンの予測通りに計画生産が進められる世界。しかしその結果にズレが生じる。
    • マシンが自身の存在を保護するために敵対する人間の力を削いでいた。しかしそれはマシン自身のためではなく第一条から人間を守るため、自分が破壊されるわけにはいかないから少数の人間に最低限の被害を与えたというもの。
    • マシンがこの答えを言わなかったのはマシンが経済を完全に支配しているという事実自体が人間を傷つけるため。

      「——マシンは単にわれわれの直接の質問に答えるだけではなくて世界情勢や人間心理全般に対する普遍的な回答を通じてわたしたちの未来を導いていると言うことね。そしてそれを知ることは、われわれを不幸にし、われわれの誇りを傷つけるかもしれない。マシンは我々を不幸にすることはできないし、してはならないんです——」

    • これはこれでいいのだけど、ズレに気づかれることで結局キャルヴィンが答えにたどり着くのは想定できてないのだろうか?そうすると矛盾するけど。プロットの都合上種明かしが必要というのはそう。