あかいねじ

感想を書く。SF、ミステリ、それ以外について。

アイザック・アシモフ『ロボットの時代』感想

ロボット三原則 第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、このかぎりではない。

読んでない。けど短編は全部読んだので感想を書く。

AL76号失踪す

  • ロボットが失踪してしまうドタバタすれ違いコメディ。
  • 軽いノリで事態がどんどん進んでいくのでスルスル読める。
  • 伏線とオチはベタだが王道。

思わざる勝利

  • ロボットと木星人のドタバタ勘違いコメディ。
  • こっちもロボットの愚直さとそれに振り回される人間(木星人)の喜劇。
  • またなんかやっちゃいました?(溶鉱炉に入りながら)

第一条

  • 第一条に背いたロボットがいた話。
  • 与太話。作者もそう言ってる。

みんな集まれ

  • 冷戦の最中に紛れ込んだ敵国のヒューマノイド。彼らの狙いは何か?
  • 星新一がオチのアイデア流用してた気がする。宇宙人が攻めてくる話で(たくさんありそう)。
  • 科学者が入れ替え可能なら全部入れ替えてしまった方がコントロールできるのでは?と思った。

お気に召すことうけあい

  • 出張中の夫、家に残ったハンサムな家政ロボットと妻。何も起きないはずもなく……。
  • 提示されるシチュエーションから予想通りに進む話。悪く言えば捻りがなく、よく言えば分かりやすい。
  • ロボットより人間の方に問題がある、というのはアシモフのロボット短編では繰り返される主題でもある。
  • フランケンシュタイン・コンプレックスにめちゃくちゃ言及するのは時代背景なのか、物語を書くための設定として使いやすいからなのか、どっちだろう。
    • と思ったが、最近『AI崩壊』とかいう映画もやってましたね。見てないので内容は知らない。そういう映画ではないかもしれない。見てないのに批評してはいけない。でも批評するためだけに見るって変じゃない?

危険

  • 危険な宇宙船に乗り込む話。
  • 危険な宇宙船の操縦をロボットに任せたら、宇宙船が発進しなかった。いつ発信するかわからない宇宙船に調査員を送ろうとするがキャルヴィンはロボットの代わりに物理学者ブラックを送らせる。なんとかトラブルを修復するブラック。怒り心頭のブラックはキャルヴィンへの復讐を企てるが、怒りによって危険を克服させることがキャルヴィンの狙いだった。ブラックは感服する。
  • ロボットの方が高価なので人を送り込むのは皮肉。
  • ポテンシャルの暗喩が使われている。危険を冒すことについて正常な判断をできない状態にすることでそのポテンシャルを緩和している。アシモフってポテンシャルのことが好きなんかなあ?
  • なんかトンチみたいなオチになっている。

レニイ

  • 幼児のようなロボットの話。
  • 誤操作から幼児のようなロボットが生まれてしまう。キャルヴィンは研究と称して長期間そのロボット、レニイと向き合うが……。汎用ロボットの可能性を主張しながらも子供の代替品として使っているだけじゃないか、と言うオチ。
  • あんまり面白くなかった。というか、スーザン・キャルヴィンものが自分に合わない。ロボットを溺愛する独身女、という書き方がちょっと……。
  • アシモフのロボットは全体的に人間らしさがある。これは現代的な倫理観からいえばかなりあり得ない。というのも、それが人間と何らかの意味で同等なら倫理的な観点から道具として働かせることはできないからだ(諸説あります)。自意識があったり、苦痛を感じたりする存在を勝手に作って良いのかはロボット倫理学の問題になっている(これは人間の出生には適用されないらしい。諸説あります)。

校正

  • 校正ロボットの話。
  • 大学にリースされた校正ロボットが誤作動を起こして名誉毀損されたと裁判を起こされるUSロボット社。キャルヴィンは人間の心理と第一条を逆手にとって原告を守るためにロボットに証言させる。
  • アンチ・ロボットとしてラッダイト的な議論を取り上げている。工業的なロボットを考えるならこれは真っ先に上がりそうな問題の一つだけど、アシモフはあまり取り上げていない。
  • タイプライターや印刷機の奪うものはたかがしれている、という発言について。これは後世(それらが普及した後)から見た視点であることに注意したい。それらが奪ったものについて奪われたことすら認識していないということはあり得る。テッド・チャン「偽りのない事実、偽りのない気持ち」ではこのテーマをより深く扱っている。
  • その逆として、ロボットが知的作業を代替しても、そこで奪われていないものが発達して失われたものは存在しなかったも同然の扱いになるかもしれない。