アイザック・アシモフ『コンプリート・ロボット』感想
ロボット三原則 第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
読んだ。
長くなるので記事を3つに分割した。『我はロボット』と『ロボットの時代』の全短編はこの短編集に収録されている。前の記事に出てきた短編は同じことしか書いてないので飛ばし読みしてよい。あるいはこの記事だけ読めば良い。
全体的には、いろんなことをやらかしてしまう(滑稽な)人間と彼らに忠実な(愛らしい)ロボットという話が多かった。これはロボットが工業的なもの(つまり人間の生産のために従事すべきもの)として捉えているアシモフの感性によるところが大きいだろう。あと、古い。計算尺とか出てくる。コンピューターも半導体じゃなくて真空管。時代を感じる。
1 非ヒト型ロボットたち
親友
- ロボットの犬と本物の犬の話。ペットたる条件は、飼い主がそのペットを愛していること。
- 月に住むアンダースン一家。息子のジミーはロボットの犬;ロバットと遊んでいる。夫妻は本物の犬を地球から取り寄せジミーのロボットと交換しようとする。父はロバットは模造品で、その動きはプログラムされているという。ジミーは交換を拒む。それを聞いたロバットは幸せそうな鳴き声をあげる。
- この話と直接関係はないが、ロボット犬特有の問題としてそれは(自作したのでなければ)企業が製作したものだということがある。
- それらは原理的には半永久的な寿命を持てるが、サポートの方には期限がある。
- つまり、それらは企業の都合(サポートに費やすコスト、新しい製品の需要)によって死ななければならない。
- このあたりはテッド・チャン「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」でも語られている。
- 生物としてのペットも死ぬというのはそうだが、それらは(現在の技術力では)不可抗力なのに対して、こちらは意図的に殺さなければ半永久的に生き続ける。ここに問題がある。
サリーはわが恋人
- 陽電子頭脳をもった自動操縦車とその整備人の話。
- 高価な自動操縦車を盗もうと強盗がやってくるが、自動操縦車は自前の陽電子頭脳で自衛する。結果として強盗は自分の持っていた自動操縦バスに轢き殺される。しかし整備人は自動操縦車が意思疎通していることに不気味さを感じて以前のように愛情を持って接することができなくなる。
- アシモフ曰く、<脅威としてのロボット>もの。本人的にはこの種の話が嫌いらしいので珍しい作品かもしれない。
- 自動操縦車が自己の保存や苦痛を気にするかが気になった。そういう機能は普通つけないのでは。
- これも関係のない話だが、自動車って運転するのは人だから自動運転車に比べて「自動」じゃないよね。自動運転車のことなんて言うの(自動運転車では?)。
- 内燃機関は「馬車と比べて」自動というのはわかるけど。
- これに似た話として新幹線の名付けがある。「ひかり」は来たるべき技術的臨界点までとっておくべきだっただろう。
- もちろん人は未来に資源を残すよりも今使い尽くすという悲しい性質があるので、これもその一例に過ぎない。
いつの日か
- お話しをしゃべるロボットの話。
- 御伽噺を話すロボット、バード。その持ち主のニッコロは旧型のバードに不満だ。プログラミングや電子機器に優れた友人ポールがコンピュータの語彙をバードに覚えさせるがバードの物語の大筋は変わらない。二人はバードを放って遊びに行く。残されたバードは自分の恨みを映したかのような物語を喋り出すが中枢部が壊れ、「いつの日か——」と繰り返す。
- こっちは<哀れなものとしてのロボット>ものらしい。
- 字が無くなって言葉だけが残っている世界。「ほんものの本」という言葉が自動で喋るものを指す。
- 二人の子供が古臭い童話を軽蔑しながら同じく古代の遺物の「文字」を秘密の暗号として使うアイデアに興奮しているという対比。
- 「いつの日か」という言葉も使われなくなった玩具、叶わない願望の哀愁を感じさせる。
動かないロボットたち
動かないロボット=コンピューターもの。
物の見方
- 巨大なコンピューター(今でいうところの人工知能)に起きた問題の話。
- 世界中の問題を解決するコンピューター;マルチヴァックが壊れてしまう。ロジャーの父の仕事はマルチヴァックの解析。問いに対する答えが定まらないマルチヴァックにお手上げの父にロジャーは子供の視点からある提案をする。「パパ、子供は遊ばないとね」
- 次の一節は今の機械学習のことを考えると面白い。
「いいかい、ロジャー、もしマルチヴァックが人間のように賢いとしたら、俺たちはあれと話ができるから、あれがどんなに複雑であろうとどこが悪いか突き止めることができるだろう。機械のようにばかなら、単純な狂い方をするから、俺たちにも簡単に突き止められるよな。厄介なのはだ、あれは馬鹿な人間みたいに半分賢いということだよ。とても複雑な狂い方をするくらい賢い、でも狂っているところを突き止める手伝いをしてくれるほど賢くはない。——だからその賢さは誤っているんだよ。」
- だからといって今の機械学習が誤っていると言うわけではないよ。
考える!
- レーザーで脳の活動をスキャンする話。
- 正直に言えば、一回読んだ時はどうしてそうなるのか分からなかった。
- コンピューターが人の脳ほど複雑かは議論がある、と思う。
本当の恋人
- コンピューターを使って最強のマッチングをする話。
- 語りがコンピューターの一人称視点なのがオチに繋がっていて面白い。この短編集の中でも上位に入る面白さ。
金属のロボットたち
AL76号失踪す
- ロボットが失踪してしまうドタバタすれ違いコメディ。
- 軽いノリで事態がどんどん進んでいくのでスルスル読める。
- 伏線とオチはベタだが王道。
思わざる勝利
かくて楽園にあり
- ロボットは出てくるが、むしろ人間ドラマがメイン。
- 兄弟であることが異端とみなされていたり、<大災厄>という事象への言及があったりするが詳細は明かされない。後者は別になくてもよかったのでは。
- 自閉症の扱いが道具レベルで笑っちゃった。ただしこの言明は書かれた時代を考えないとフェアではないだろう。
- ロボットが水星用であったがために地球ではうまく動けないことを暗喩として自閉症も環境次第と言いたいのだろうが、それでロボットに搭載するってマジですか?
- 兄弟が遺伝子の共有について強調するシーンは「利己的な遺伝子」を読んだ後だと詭弁だ!となる。
- 兄弟が共有する遺伝子の期待値は50%で、これは親と子が共有する遺伝子の割合と等しい。もちろん、これは背景となる人々と比べて、と言う意味だ(人間は約99.9%の遺伝子を共有していることを思い出そう)。つまり、違いを生む0.1%のうち、と言う意味である。
- ここで兄弟の遺伝子共有率は親子のそれより大きくない(小さくもない。揺らぎを考えなければ)。親と子を別の存在と考えるなら遺伝子的には兄弟もまたそうだ。
- この例外は一卵性双生児であり、残念ながらウィリアムとアンソニーはそうではない。
- 兄弟が共有する遺伝子の期待値は50%で、これは親と子が共有する遺伝子の割合と等しい。もちろん、これは背景となる人々と比べて、と言う意味だ(人間は約99.9%の遺伝子を共有していることを思い出そう)。つまり、違いを生む0.1%のうち、と言う意味である。
- 結局なんだったんだ。となる短編。
光の詩
- 不器用なロボットの話。
- 「AL76号失踪す」と同じく人間のやらかしによって偉大な才能・発明が失われてしまう。
- ひとつ前の話で自閉症を扱っている点も合わせると治療や修理によって失われるものについて興味が湧く。
人種差別主義者
- 人間が二種類(一方はメタロと呼ばれている)いる世界の話。
- 医者の正体が最後に明かされるのがツイスト。
- お互いの種族がないものねだりをしたがるというのは面白い。
ロビイ
- ロボットのペットの話。
- ロボットのペット;ロビイはグローリアのお気に入りのロボット。しかし母親がロボットばかりにかまっている娘をよく思わず、父親の反対を押し切ってロビイを返品してしまう。ロビイを失ったグローリアは塞ぎ込むようになり、いくら環境を変えても改善しない。父親がロボット工場見学を提案し、グローリアはそこでロビイを見つける。走り出したグローリアだったが、そこに人間が運転するトラクターが突進してくる。素早く動けない人間に対し、ロビイは素早く動いてグローリアを助ける。
- 「親友」に似ている。それを長くしたような話。
- アシモフ最初のロボット小説らしい。ロボット三原則にも言及されている(もっとも第一条にしか触れていない)。
ヒト型ロボットたち
みんな集まれ
- 冷戦の最中に紛れ込んだ敵国のヒューマノイド。彼らの狙いは何か?
- 星新一がオチのアイデア流用してた気がする。宇宙人が攻めてくる話で(たくさんありそう)。
- 科学者が入れ替え可能なら殺すより全部入れ替えてしまった方がコントロールできるのでは?と思った。
ミラー・イメージ
- 論文の剽窃をしたのはどちらか?SFミステリー。
- ロボットが人間のために働くことを利用して推理を進める。
- ミステリーとしても通用する短編。
三百周年事件
- 大統領が暗殺された話。
- こちらもミステリー風味がある。
- 実際のところ、ロボットの統治に何か悪いことはあるだろうか?この作品では先例を作ってはならないという議論をしているがそれは循環論法で、なぜ先例を作ってロボットを統治者におけるようにしてはいけないのか、と戻ってきてしまう。
- 問題はむしろロボットを作った人間がいることだろう。そこには個人的な(企業的な、圧力団体的な)事情と主張が入る余地がある。
- USロボット社という私企業が暗に公平な存在として描かれているのは冷戦と言う背景と資本主義への信頼(信仰?)を感じる。これは言い過ぎか。
- 問題はむしろロボットを作った人間がいることだろう。そこには個人的な(企業的な、圧力団体的な)事情と主張が入る余地がある。
パウエルとドノヴァン
コンビが適当に作られたロボットたちの不可解な行動に対処する。
第一条
- 第一条に背いたロボットがいた話。
- 与太話。作者もそう言ってる。
堂々めぐり
- ロボットが戻ってこない話。
- ロボット三原則をポテンシャルの問題にして、円運動をするようになってしまったロボットを描いている。
- 均衡するようなポテンシャルを作っちゃ、ダメだろ。適当にものをつくるな!
われ思う、ゆえに……
- エネルギー中継器の運営をロボットに任せる話。かなり面白い。
- 原題は"reason"で理性・推論する(こと)を意味する。
- ロボットのキューティvs人間のパウエル・アンド・ドノヴァンの対立。キューティはエネルギー中継器を主と崇めてコントロール室から人間を締め出すが……。
- 表面的には宗教にはまったロボットvs理性的な人間だが、実際には逆転しているという構図が面白い。
- キューティは感覚より理性と論理的演繹を信じる。実際、彼の発言はほとんど正しく、根拠がある。人間は中継器の運営者としては間に合わせのものだし、少なくともステーションの全てはエネルギー中継器を目的として作られている。一方でパウエルやドノヴァンの発言の根拠は本に書いてある、私は知っている、というものでここに科学と宗教の方法論の逆転がある。
野うさぎを追って
- 意図した通りに動かないロボットの話(第三弾)。
- 6つでは多すぎたのなら設計が悪いだろ。適当にものをつくるな!
スーザン・キャルヴィン
USロボットアンド機械人間社のロボット心理学者。あんまりハマらなかったかな。
うそつき
- テレパシーを持ったロボットの話。
- 第一条からその人物にとって一番都合の良い受け答えをする。
- ただ、それがバレると考えなかったのだろうか?長続きしない心地よい嘘は都合の悪い真実よりも悪い。この短編のラストのようにかえって危害が増すような結果に繋がる。それは第一条から許されないのでは。
お気に召すことうけあい
- 出張中の夫、家に残ったハンサムな家政ロボットと妻。何も起きないはずもなく……。
- 提示されるシチュエーションから予想通りに進む話。悪く言えば捻りがなく、よく言えば分かりやすい。
- ロボットより人間の方に問題がある、というのはこの短編集で繰り返される主題でもある。
- フランケンシュタイン・コンプレックスにめちゃくちゃ言及するのは時代背景なのか、物語を書くための設定として使いやすいからなのか、どっちだろう。
- と思ったが、最近『AI崩壊』とかいう映画もやってましたね。見てないので内容は知らない。そういう映画ではないかもしれない。
レニイ
- 幼児のようなロボットの話。
- 誤操作から幼児のようなロボットが生まれてしまう。キャルヴィンは研究と称して長期間そのロボット、レニイと向き合うが……。汎用ロボットの可能性を主張しながらも子供の代替品として使っているだけじゃないか、と言うオチ。
- あんまり面白くなかった。というか、スーザン・キャルヴィンものが自分に合わない。ロボットを溺愛する独身女、という書き方がちょっと……。
- アシモフのロボットは全体的に人間らしさがある。これは現代的な倫理観からいえばかなりあり得ない。というのも、それが人間と何らかの意味で同等なら倫理的な観点から道具として働かせることはできないからだ(諸説あります)。自意識があったり、苦痛を感じたりする存在を勝手に作って良いのかはロボット倫理学の問題になっている(これは人間の出生には適用されないらしい。諸説あります)。
校正
- 校正ロボットの話。
- 大学にリースされた校正ロボットが誤作動を起こして名誉毀損されたと裁判を起こされるUSロボット社。キャルヴィンは人間の心理と第一条を逆手にとって原告を守るためにロボットに証言させる。
- アンチ・ロボットとしてラッダイト的な議論を取り上げている。工業的なロボットを考えるならこれは真っ先に上がりそうな問題の一つだけど、アシモフはあまり取り上げていない。
- タイプライターや印刷機の奪うものはたかがしれている、という発言について。これは後世(それらが普及した後)から見た視点であることに注意したい。それらが奪ったものについて奪われたことすら認識していないということはあり得る。テッド・チャン「偽りのない事実、偽りのない気持ち」ではこのテーマをより深く扱っている。
- その逆として、ロボットが知的作業を代替しても、そこで奪われていないものが発達して失われたものは存在しなかったも同然の扱いになるかもしれない。
迷子のロボット
- 第一条が不完全なロボットの話。
- 第一条が不完全なロボットが同型機の中に紛れ込んで区別がつかなくなってしまう。キャルヴィンは人間を危険に晒して第一条を使い、ロボットを炙り出そうとするがうまくいかず、却ってロボットを増長させてしまう。最後はロボットの優越感を逆手にとってロボットを見つけ出す。
- アシモフの描くロボットはかなり人間らしい。具体的には、感情を持つように見える。
- ロボットが優れていると言うとき、何が優れているのかは難しい。というのも、ロボット自身はふつう目的を持たないからだ。目的を持つのは人間であり、道具としてロボットを用いるが、その目的が達成されるかどうかはロボット本人(本ロボット?)には関係がない。優劣というのは目的論を使う人間の思考方法にかなり限定されている尺度だと思う。
危険
- 危険な宇宙船に乗り込む話。
- 危険な宇宙船の操縦をロボットに任せたら、宇宙船が発進しなかった。いつ発信するかわからない宇宙船に調査員を送ろうとするがキャルヴィンはロボットの代わりに物理学者ブラックを送らせる。なんとかトラブルを修復するブラック。怒り心頭のブラックはキャルヴィンへの復讐を企てるが、怒りによって危険を克服させることがキャルヴィンの狙いだった。ブラックは感服する。
- ロボットの方が高価なので人を送り込むのは皮肉。
- ポテンシャルの暗喩が使われている。危険を冒すことについて正常な判断をできない状態にすることでそのポテンシャルを緩和している。アシモフってポテンシャルのことが好きなんかなあ?
- なんかトンチみたいなオチになっている。
逃避
- 人間の死と第一条のジレンマの話。
- 宇宙船の作成を依頼されるロボット。しかしその宇宙船は必然的に一時的な死を含む。他社のロボットはそのジレンマから壊れてしまったがUSロボット社のロボットは何故かジレンマに陥らず宇宙船を完成させてしまった。キャルヴィンの助言から、生き返るなら問題ないと看做していた。
- 第一条の落とし穴かもしれないが、生き返ることで死は問題ないにせよ苦痛を与えていることは変わらないのであまり納得できなかった。
- パウエルとドノヴァンがとばっちりにあう。かわいそう。
証拠
- 市長候補はロボットなのか?
- 飲食を全くしない市長候補。その対立者がUSロボット社に調査を依頼する。その噂が市長候補の名前と共に広まったあと、市長候補の演説で一人の男が自分を殴ってみろという。第一条からロボットは人に危害を加えられないはずだが、市長は殴り、自分がロボットでないと民衆に知らしめる。
- 実際殴られたのはロボットだった、というオチ。キャルヴィンはそれを黙っておく。
- この後の話、「災厄のとき」でもこの市長候補は登場している。出世してるし。
災厄のとき
- 世界を管理するロボットの話。
- マシンの予測通りに計画生産が進められる世界。しかしその結果にズレが生じる。
- マシンが自身の存在を保護するために敵対する人間の力を削いでいた。しかしそれはマシン自身のためではなく第一条から人間を守るため、自分が破壊されるわけにはいかないから少数の人間に最低限の被害を与えたというもの。
- マシンがこの答えを言わなかったのはマシンが経済を完全に支配しているという事実自体が人間を傷つけるため。
「——マシンは単にわれわれの直接の質問に答えるだけではなくて世界情勢や人間心理全般に対する普遍的な回答を通じてわたしたちの未来を導いていると言うことね。そしてそれを知ることは、われわれを不幸にし、われわれの誇りを傷つけるかもしれない。マシンは我々を不幸にすることはできないし、してはならないんです——」
- これはこれでいいのだけど、ズレに気づかれることで結局キャルヴィンが答えにたどり着くのは想定できてないのだろうか?そうすると矛盾するけど。プロットの都合上種明かしが必要というのはそう。
女性の直感
- 直感を備えたロボットの話。
- 多額の予算をつぎ込み、ついに求めていた答えを得たロボットが答えを知っていた技師と共に飛行機事故で爆散してしまう。USロボット社は答えを知っている者を探すが見つからない。キャルヴィンは技師の短い通話記録から運搬したトラックの運転手が答えを聞いていたと推理する。
- 女性やブルーワーカーに対する無意識の侮蔑を皮肉った短編。
世のひとはいかなるものなれば……
- 人間とロボットの話。
- 人間は依然ロボットを恐怖するフランケンシュタイン・コンプレックスを抱いていた。これを解決するためロボット、ジョージ10に思考させる。彼は話し相手としてもう一つのロボット、ジョージ9を要求し、思考の末に虫やミミズ型のロボットから慣れさせることを提案する。しかし、彼らが生態系をロボット化することには思惑があった。
- 第一条の暗黙の了解としてより価値の高い人間を助けるべきというものがある。ロボットたちは人間の本質は外見に囚われないとして自分たちとその後継たちを「より優れた人間」と位置付ける。
- <ほかのような人間たち>とはロボットでない人間のこと。
- あまり生態系をロボット化する意義がわからなかった。文脈から行ってロボットたちが人間として生活するようになるための準備らしいけど、受け入れられるようにするためってことであってる?
- <ほかのような人間たち>への服従も保護も不可能になるって言ってたけどこれはそれらが第一条に反するから(ロボットに対する危害だから)だろうか。であれば危害を加えない服従は許されるのか。<ほかのような人間たち>の利点は彼らにはロボット三原則がないことである。
- ロボットと人間の境界はどこにあるのか?という問いを含んだ短編。
- ロボットは何を持って自分を優れたと言っているのだろう?「迷子のロボット」でも書いたけど、ロボットには目的がない、特に自己保存しない(自己保存は第一条と第二条に優越しない)ので、目的論的には捉えられないと思う。
- それはそれとして第一条はかなりザルですね。
二百周年を迎えた人間
- 自分の権利のために闘う人間とロボットの話。
- ロボットが自由を手に入れ、それでもなお人間にその権利を認められず、二百年間人間に近づいていくために奮闘する。服を来て、外見を似せ、最後には手術によって自分の死まで設定した。最後の一言が切ない。
- 哀れなロボットもの。
三原則が思ったよりザルなのが意外だった。三原則がポテンシャルで説明されるのはアシモフが生化学者だったことに由来するのかもしれない。でもポテンシャルがしょぼすぎる。これで数学的に安全とは言えないだろう。「いつの日か」、「ほんとうの恋人」、「われ思う、ゆえに……」あたりが一番面白かった。他の作品も面白いしアシモフのロボットものを(殆ど)全部網羅していると思うので、アシモフの作品を読んだことがないならこれ一冊読めば大体把握できる。多分。