ミステリ
「人が神を信じなくなると、その第一の影響で、常識をなくし、物事をあるがままに見ることができなくなる……」
それから三分後、機密警察の一員ガブリエル・サイム氏は、ヨーロッパ無政府主義総評議会の木曜日に選任された。
わたしはこの街、香料樹園にある公共図書館の、四段構造になった書架のうち、上から三段めの棚に住んでいる。
いずれにしろ、世界は終わりを迎えるか、もしくは、終わらないとしても闇に飲まれることになる。
金庫にふれるときは、それを女だと思え。ぜったいにそれを忘れるな。
読んだ。
これは私の知る限り、最も不思議な事件だ。おそらく世界にもまずめったに例を見ない不可能犯罪であろうと思う。
"干魃"ということばを聞かされてもただうなずくだけで、この川が干上がっていることにどうして思い至らなかったのか。〔…〕巨大な傷のなかに一人立たされたフォークは、両手に顔をうずめ、一度だけ叫んだ。
負け犬のように背を丸めて、顔を髪で隠してはいても、少女は拳銃使いの眼をしていた。
「殺人お知らせ申し上げます、十月二十九日金曜日、午後六時三十分より——」
歯医者へ行ったときに自分を英雄だと思える人間はほとんどない
どこまでも歩き続けた。歩いて歩いて歩き続け、地の果てまでも行きたい気分だった。どうせここは見知らぬ異邦の地だ、どこまで行こうと同じことだと考えた。
近頃、私は未知の読者から手紙をいただくようになった。御手洗の近況を報せ、早く別の事件を教えろというのである。
「——きょうは何曜日でしょう?火曜日ですわね。では火曜クラブとでもして。会合は毎週一度。みんながかわるがわる、何かしら問題を出すことにして——」
そしてみんな一緒にちいさなねじれた家に住んでたよ。
「僕の本当の望みは、妻を殺すことだよ」
私はどうやらまだ生きているようだった。
鵜川妙子は五年の服役の果てに、満願成就を迎えられたのだろうか。
「おれはそうは思わんね。主題(メインテーマ)となるのは殺人だ。重要なのはそこなんだよ」
わたしとちがって、あなたはちゃんと警告を受けたことは忘れないように。
「天国が存在するか知りたくないか」