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アガサ・クリスティー『ねじれた家』感想

そしてみんな一緒にちいさなねじれた家に住んでたよ。

読んだ。

原題は"Crooked House"で Crooked には曲がった、捻れた、と言う意味と不正を行う人、詐欺師のような、という意味がある。本作では心の曲がった家族たちと一緒に暮らしている"ちいさなねじれた家"を舞台にして、法律すれすれの稼業で富豪になった老人が毒殺される。残忍な性格の血が流れている一家で立て続けに殺人が起こるというのはエラリー・クイーン『Yの悲劇』を連想させる。本作の方が後らしい。

あたしたちの一家って、とても変なのよ。残忍なところがたくさんあって、それも、みんなちがうの。

シリーズものではなく、主人公のチャールズは結婚しようと思っている女性ソフィアの家で起こったこの事件を解決しようと捜査を始める。

第一に候補に上がるのは殺されたアリスタイド・レオニダスの若い後妻、ブレンダ。しかしアリスタイドの長男ロジャーも自身が経営するレストランが破綻寸前で、父にも援助を断られたと言う情報が次男の娘、ジョセフィン(彼女は家で私立探偵の真似事をしている)からもたらされ、ロジャーが捜査線上に浮かび上がる。ロジャーは警察の取り調べを受ける最中、むしろ父は援助するつもりだったと供述し、証拠の手紙を取り出す。さらにソフィアに全財産を譲るという遺言書まで出てくる。そうしてこうしているうちに第二事件が起こる。被害者はジョセフィンだった。ジョセフィンは一命を取り留める。

残り数十ページになって第二の殺人が起こり、ばあやが亡くなる。ジョセフィンが飲まなかったココアを飲んで死んだのだ。

結局全ての犯人はジョセフィンだったということが最後に明かされる。

チャールズはジョセフィンがメモを取っていた黒いノートを探そうとするが彼女の部屋は既に何者かに荒らされていた。

自分がかなりはっきり伏線だと思ったのは、

子供というのは欲望をそのまま実行にうつすものだ。——ところがなかには道徳的に成長しない人間がいるんだよ。殺人はいけないことだと頭では知りながら、心から感じていない人間がね。


「だけどね、なにもわたしは盲目的に可愛がってばかりいるんじゃないけどね」

のあたり。あとしきりに警察を「おばかさん」と呼ぶとかもあったか。なのでジョセフィンが死んだ(死んでない)ときはびびった。生きてたけど。

謎解きよりも捻れた一家の物語という色の方が強い。一家はよそものの後妻と家庭教師をスケープゴートにしようとするが、実際には犯人が一家の中にいること、あるいは、それに加えてそれが子供のジョセフィンだということを知っていて、庇っているようにも見える。

こういう、恐るべき子供ものは大抵子供が死んで(殺されて)幕を閉じるが、現実にもそういう人たちはいるわけで、そちらは殺してはいおしまい、とはいかない。実際のところ、サイコパスと脳の機能については関連があることが分かっているし、そのあたりの治療とか責任能力とかってどうなってるのだろうか。