アガサ・クリスティー『予告殺人』感想
「殺人お知らせ申し上げます、十月二十九日金曜日、午後六時三十分より——」
読んだ。
アガサ・クリスティのミス・マープル長編もの。結構評価が高い。江戸川乱歩のベスト8や作者ベストテンにも選ばれている。とWikipediaに書いてあった。
謎が魅力的で、テンポよく殺人が進む。ミスリードもしっかりしていて、終盤まで読者を振り回してくれる。
クリスティ文庫の田村隆一訳で読んだのだが、裏表紙に書かれたあらすじで殺人の日付が「12月29日」となっていた。本文では十月。英語版Wikipediaでも十月と書かれているので多分十月が正しい。この版は絶版で新訳版が出ているのでそちらでは直っているかもしれない。一番ページ数が多い版だった。お得?
あらすじ
リトル・パドックスという田舎が舞台。地方紙の個人広告欄に殺人のお知らせが掲載される。住人たちはそれを冗談だと受け取り、興味半分に広告された家に集まる。果たして、六時三十分になると男が押し入ってきて銃声が響く。しかし死んだのは押し入った男、ルディー・シャーツその人だった。
家の女主人レティシィア・ブラックロックの命が狙われたのではないかという推理が立つ。彼女はもうすぐで資産家の遺産を受け取ることになっていたが、彼女が死ねばそれは別の人間の手に渡ることになっていた。彼女のアスピリンが毒薬とすり替えられ、レティシィアの旧友でお手伝いのドラ・バンナーが死ぬ。さらに事件の重要な情報を思い出したマーガトロイドも口封じに殺される。
レティシィアは死んでおり、妹のシャーロットが遺産欲しさに入れ替わって生きているふりをしていた。ルディー・シャーツはシャーロットの顔を知っていたため彼女に仕組まれて殺され、ドラも入れ替わりについて口を滑らせないよう殺されてしまった。
感想
- マーガトロイドが殺されるシーン、完全にミステリのお約束通りで笑った。
- 登場人物紹介に犯人が載ってない。ある意味では。
- 暗闇の中でちゃんと計画通りに動くの大変そう。何も見えないと明言されている割にはかなり要領よく仕事をこなす犯人。
- 遺産の利害関係者が集まりすぎ。
- そして全員身分を偽りすぎ。
- ミステリはそういうもの。
- そして全員身分を偽りすぎ。
- 友達を殺したことで孤独になったという犯人が悲しい。
- でも最後はクリスティらしく強引にハッピーエンドになる。オチの新聞のくだりも面白い。演劇らしいという後書きの評も納得できる。
マーガトロイドの「彼女はそこにいなかった」のくだりでそこにいなくて一番衝撃的なのは誰かなあ、と考えて犯人に気づいた(他のヒントには全く気づかなかった)。ほとんど当てずっぽうじゃん。しかし入れ替わりには気づかなかった。クリスティは「ババアの顔不可弁別性原理」みたいな持論をもっていて、よく使う。気づけなかったのが悔しい。