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ジョーダン・ハーパー『拳銃使いの娘』感想

負け犬のように背を丸めて、顔を髪で隠してはいても、少女は拳銃使いの眼をしていた。

読んだ。

最近はこのミスの海外ミステリを中心に読んでいる。自分で本を発掘するということがあまりなく、こういうランキングを参考にして面白い本だけ読みたい〜と思っているのだけど、結構当たり外れがあることがわかってきた。物事は結局のところ運。

ミステリというよりクライムアクション。アクションだ。陰気な不思議ちゃんが暴力に慣れた父親に連れられて逃亡劇を繰り広げる。一種の成長劇でもある。最初の30ページでこの大筋が示され、あとはその流れに沿って話が進んでいく。極めてスピーディでお手本のような起承転結の構成をしている。ハリウッド映画っぽいと思った。親子版『LEON』みたいな。と思ったら解説で『子連れ狼』や『LEON』を参考にしたと書いてあった。まあそうだよね。

基本的に親子が悪党に追われ、悪党を返り討ちにする。あるいは襲う。悪党もコテコテで分かりやすい。

「〔…〕犬は人間じゃない。人間が犬なんだ」

こういうセリフ、滅茶苦茶悪役っぽくていいですね。

邦訳タイトルは拳銃使いの娘で原題が"SHE RIDES SHOTGUN"。たびたび言及される拳銃使いの眼は暴力に触れ、暴力を学ぶうちにそれに魅了されていく少女の未来を暗示している。原題の方はスラングがなんか色々あるらしい。助手席に乗るとかなんとか。表紙も助手席からの視点になっている。

普通に面白く、一時間くらいで読める。細かいことを気にせずに爽快に楽しめるパルプ・フィクションの見本といった一冊。一本の映画を見たような感覚になった。熊がいい味を出していると思います。