原尞『それまでの明日』感想
私はどうやらまだ生きているようだった。
読んだ。
このミステリーがすごい2019国内一位。ここしばらくはこのミスにランクインしている作品を読んでいる。前評判通りの作品だったか。そうでもなかったかな。私立探偵・沢崎シリーズの作品らしい。警察や暴力団との因縁みたいなシリーズを追っている人向けの描写がある。
私立探偵の私は消費者金融の支店長、望月から料亭の女将の身辺調査を依頼される。しかし依頼人は失踪し、当の支店に行ってみると今度は強盗の現場にでくわす。強盗が失敗して金庫を確認してみると五億円が入った謎のジュラルミンケースが見つかる。謎が謎を呼ぶ、という展開。語り方がわざとらしくて古臭いのが少し気になった。ハードボイルドってやつですか?
その後も警察や別の興信所や暴力団なんかが出てくる。強盗騒ぎで知り合った好青年の海津と協力して捜査するのだが、ここらへんは少し冗長。ただし文章は詰まるところがなく読みやすいのでそれほど気にならなかった。望月が勤めていた消費者金融は暴力団や他の経営者の裏金を金庫に隠すビジネスをやっていて、望月はその金を横領してしまった。横領を隠すために強盗の茶番劇を仕組み、わざと警察に裏金を押収させた。依頼人は望月の名前を騙った全く無関係の人物。
展開で気になったことについて
- 強盗での一幕。なんで海津が沢崎に携帯を渡したのか不明。最初にばれなかったのだからそのまま使えばよかったのでは?
- 押収された金額がバレないわけなくない?と思った。それで帳簿を誤魔化せるものなのだろうか。でも謎解きは面白かったから良いか。
その他
- 上に書いたあらすじは本筋には関係ない。多分。好青年や紳士(依頼人)との出会い、すれ違い、別れをハードボイルドに書きたかったのだと思う。どっちつかずな印象を受けた。
- 最後に唐突な東日本大震災の描写が入る。このとき海津は東北にいることが示唆されている(海津という名前も暗示的だ)。最後の二ページで本当に唐突に入るし、唐突に終わるので面食らってしまった。どういうこと?
- タイトル的にもここに何か意味があるのだろうが、私には分からなかった。この唐突さも何かを意味しているとは思うのだけど。
- 最後に唐突な東日本大震災の描写が入る。このとき海津は東北にいることが示唆されている(海津という名前も暗示的だ)。最後の二ページで本当に唐突に入るし、唐突に終わるので面食らってしまった。どういうこと?
- レイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ(長いお別れ)』をリスペクトしているらしい。こちらはまだ読んだことがないので読んでみたい。