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感想を書く。SF、ミステリ、それ以外について。

アンソニー・ホロヴィッツ『メインテーマは殺人』感想

「おれはそうは思わんね。主題(メインテーマ)となるのは殺人だ。重要なのはそこなんだよ」

読んだ。

  • タイトルが良い。『メインテーマは殺人(原題:The Word is Murder)』。

  • 謎がいい。死ぬ前に葬儀の手配をする。まあ、これは普通だ。その日に殺される。これは異常だ。あらすじを読んだだけで面白くなりそうだと思わせる。

  • 今作でも実在の人物を出したり、フィクションやミステリの意義を問うてみたりとメタ要素が多い。私は前作の方が面白かったかなあ。というか、今作は私の趣味が合わなかったというのが正確か。前作が面白くてハードルを上げすぎただけで、本作も普通に面白いかも。
  • フーダニットの部分はストレートで、怪しい人物は結構分かる。演劇要素がかなり不自然に挿入されるので。それは前作も同じだが、今作は葬儀の準備をした日に殺される資産家という謎が魅力的だっただけに、その解決が肩透かしだった(個人の感想です)のが残念だった。
  • でもその日に殺さなくてもよくないですか?即断即決すぎる。鍵も見つけて手際がいい。私なんかは自分で自分の鍵を無くすような人間なので尚更そう思った。全体的に犯人が超人で笑った。
  • 実在の人物(実際はそれに限りなく似せた架空の人物)を出したり、仮名であることを強調したり、フィクションの作為性に言及したりとメタっぽさはあるのだが、あんまり刺さらなかった。私はポール・オースター『インヴィジブル』が好きです。でも最近メタ・フィクションみたいなのを読みすぎて食傷気味。もっと読者との約束を信じてくれ〜。
  • 前作でも少し感じたことだけど、話が長い。前作は実質2本立てだったが、今作は一つの謎を追う展開だから余計にそう感じたのかもれない。一応名探偵ホーソーンの活躍という感じではあるのだが、うーん。そんなに長くしなくても(あるいは書かなくても)よくない?みたいな描写が多かった。
  • 次作『その裁きは死』は読むか微妙かな。読むけど。こっちもタイトルがいい(原題:"The Sentence is Death")。

個人的あらすじ

Q.自らの葬儀の手配をしたまさにその日、資産家の老婦人は絞殺された。なぜか?

A.葬儀屋がマジで狂っちゃった殺人鬼だったから。